人工関節置換術(対象となる疾患)

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A)膝関節疾患

1)変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)

 

年齢とともに膝関節の関節軟骨がすり減って、膝の痛みと変形が来る病気です。65才以上の方の50%以上にあるといわれ、女性に多く、高齢化社会を迎えた日本では一種の国民病とも言えます。原因は関節軟骨の老化と考えられますが、同じように暮らしていても、なる人もならない人もあり個人差があります。その中ではっきりと関係のある要因は肥満です。膝関節には歩行をしているだけで体重の約3倍の力がかかるといわれており、変形性関節症の予防や進行を止めるためには、体重をコントロールすることが最も重要です。最初の症状は正座ができない、椅子から立ち上がりの時の痛み、階段での痛みなどがあげられます。その後、関節の動きが悪くなったり、時に関節に水がたまったりして徐々に進行します。通常は膝関節の内側の軟骨が痛むことが多く、すり減ってきますので膝がO脚変形をしてきます。

徐々に歩行距離も短くなっていきます。治療には手術をしない治療(保存療法)と手術療法があります。保存療法には薬物療法(内服、関節注射)・運動療法・装具療法・物理療法などがあり、通常いくつかの組み合わせで行います。比較的初期の変形の軽いときは保存療法で痛みをコントロールできますが、変形が進行し疼痛が強くなってきた場合は、膝が曲げにくくなるだけでなく歩くのも困難となるため手術が必要となります。

 人工膝関節置換術の適応

人工膝関節置換術は傷んだ関節を人工関節にすることでQOL(生活における質)を劇的に改善する優れた手術です。痛み止め(鎮痛剤)や注射、装具などによる保存治療が功を奏せず、関節の機能が損なわれている時には、関節機能再建術である人工膝関節置換術は治療の選択肢となります。

以下の疾患(病気)に対して人工膝関節置換術はしばしば適用されます。

変形性関節症の診断は、単純レントゲン写真を利用することが一般的です。その特徴として、初期には骨棘(こつきょく=ほねのとげ)形成を認め、進行すると軟骨下骨の硬化像と関節裂隙の狭小化が起こり(進行期関節症)、最終的には骨侵食(骨が削れてくる)を伴う関節の破壊を生じます(末期関節症)。保存治療(手術以外の治療法)でなかなか痛みが取れない場合や病気が進行(軟骨の消失)している場合には、人工膝関節置換術による治療も検討します。

2)特発性膝骨壊死(とくはつせいひざこつえし)

特発性膝骨壊死は、膝関節の骨の一部に壊死様変化が生じ荷重により陥没する原因不明の疾患です。膠原病の治療などのステロイド投与によるものはステロイド性骨壊死と呼ばれています。特発性膝骨壊死は大腿骨内顆に好発し、55歳以上の中年女性に多く発生することが報告されています。痛みは膝の内側に生じることが多いため、変形性膝関節症の症状と似ていますが、痛みが急性に生じたり、夜間安静時の痛みを伴ったりします。初期にはレントゲンでは診断がつかないことが多いため、放置すると時間とともに骨壊死部が陥没し変形と痛みが悪化してきます。骨壊死部の陥没を伴わない初期のものでは、安静(体重をかけない)と薬物治療で治療できる場合があります。病期が進行し、骨と軟骨の破壊が生じてきた場合は手術が必要となります。当院ではこのような症例に対し人工関節単顆置換術を積極的に施行しております。

大腿骨内顆部骨壊死の画像(左膝):(A)単純レントゲン上に骨透亮像(薄く抜けているところ)がみえる、
(B、C)MRI画像(T1強調)で骨壊死部は黒くみえる(B:冠状断、C:矢状断) 

 

 

B)股関節疾患

1)変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)

どんな病気か

 関節とは脚のつけねにある関節で、骨盤のくぼみ(臼蓋)と大腿骨の末端(大腿骨頭)で構成されています。様々な原因によりこの関節軟骨に変性や摩耗がおこり、骨の増生や変形、破壊が起こった状態を変形性股関節症といいます。

原因は何か

 一次性と二次性に分けられます。一次性は、解剖学的には正常ですが、遺伝性素因や加齢などにより発症したものです。二次性は何らかの形態異常、股関節疾患、外傷の後で発症するものです。中でも先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全によるものが90%を占め、女性に多いという特徴があります。そのほかペルテス病や大腿骨頭すべり症などの小児疾患、大腿骨頭壊死などでも起こります。欧米では一次性が約半数を占めるのに対し、日本では大多数が二次性です。

症状の現れ方

 症状としてまず股関節痛が出現します。股関節痛は基本的には脚のつけねの前(鼠径部)に生じますが、臀部、大腿部、膝にも痛みが出現することもあり、注意が必要です。痛みは最初は関節を動かす時や歩行時のみに感じますが、進行すると安静時にも出現するようになります。痛い時期が長期に及ぶと、脚の筋肉が衰え、筋の萎縮や筋力の低下が認められるようになります。また、次第に関節の動きが悪くなり(拘縮)、関節の変形が進行すると脚の長さが短くなり、跛行(はこう)も目立つようになります。

検査と診断

 診断は、ほとんどの場合X線所見のみで可能です。しかしながら、腰椎疾患など股関節以外の疾患を合併している場合や関節リウマチなど他の関節疾患との鑑別を要する場合などもあり、やはり整形外科の専門医にきちんと診断してもらうことが重要です。

治療の方法

  1. 保存的治療

     基本的にはまず保存的治療を行います。具体的には消炎鎮痛剤により疼痛をコントロールしながら、減量や臀部の筋力強化に努めます。疼痛が強い時期には杖などで股関節の負担を減らすことも効果があります。

  2. 手術的治療

     保存的治療にもかかわらず日常生活にも支障が出るほどの疼痛が残り、患者さんが希望されれば手術が行われます。患者さんの年齢や関節変形の程度により骨切り術か人工股関節置換術かを選択します。

    1)骨きり術
    骨切り術には大腿骨骨切り術や骨盤骨切り術があり、関節が温存できるため比較的若い人に行われますが、リハビリにやや長期を要します。

    2)人工物置換術
    人工股関節置換術は比較的高齢の方や末期の患者さんに行われ、痛みのため歩行できなかった方でも、多くの場合痛みなく歩行できることが可能になります。この人工関節の分野でも最近の医療技術や医療材料の進歩は目覚しいものがあります。まず手術の傷跡がかなり小さくなってきて、早期リハビリ、早期社会復帰が可能となっています。また、人工関節の材質や形状の改良によって、長持ちする人工関節も使えるようになりました。そのため最近では比較的若い方も人工股関節を希望されるようになりました。

病気に気づいたらどうする

 整形外科を受診してください。手術的治療にはタイミングも大事ですので、痛みがなくても定期的に専門医に受診をして経過を観察しながら、適切な時期に適切な手術を受けることが重要です。また、それぞれの手術方法にも一長一短があり、感染や静脈血栓塞栓症などの合併症の問題もありますので、手術の際には主治医とよく相談することが重要です。

 

2)特発性大腿骨頭壊死症(とくはつせいだいたいこっとうえししょう)

どんな病気か

 大腿骨の末端、大腿骨頭の骨の組織が何らかの原因で死んでしまって(骨壊死)、そのために強度を保てなくなり、陥没してしまう病気です。日本では1年間に約2000人以上の患者さんが発生しているといわれています。男女比では5:4とやや男性に多い傾向です。

原因は何か

 厚生労働省の研究班によって原因解明に対する研究が進んでおり、ある程度まではわかっていますが、まだ十分ではありません。ただ、約半数の患者さんがステロイドホルモンという薬を大量に使用されており、また大量にアルコールを摂取された方も多くみられ、このステロイドとアルコールに何らかの因果関係があることが推測されています。

症状の現れ方

 骨壊死だけの段階ではほとんど症状はありませんが、もろい部分がわずかでも陥没すると股関節痛が出現します。痛みは歩行時などに強くなり、安静時にも出現することがあります。また、腰殿部や膝などにも自覚することがあります。

検査と診断

 診断には単純X線撮影、MRI、CT、骨シンチグラムなどの検査により行われますが、これらのうちMRIは全く無症状のうちでも骨壊死が確認でき、最も早期に確実に診断が可能です。X線撮影では骨の反応が出現するか、陥没が起こってはじめて確認されますので、MRIに比べ診断が遅れます。一般的にはこれらの二つの検査で確定診断が可能で、骨シンチグラムはあまり行われていません。

治療の方法

  1. 保存的治療

     基本的にはまず保存的治療を行います。具体的には消炎鎮痛剤により疼痛をコントロールしながら、減量や臀部の筋力強化に努めます。疼痛が強い時期には杖などで股関節の負担を減らすことも効果があります。

  2. 手術的治療

     保存的治療にもかかわらず日常生活にも支障が出るほどの疼痛が残り、患者さんが希望されれば手術が行われます。患者さんの年齢や関節変形の程度により骨切り術か人工股関節置換術かを選択します。

    1)骨きり術
    骨切り術には大腿骨骨切り術や骨盤骨切り術があり、関節が温存できるため比較的若い人に行われますが、リハビリにやや長期を要します。

    2)人工物置換術
    人工股関節置換術は比較的高齢の方や末期の患者さんに行われ、痛みのため歩行できなかった方でも、多くの場合痛みなく歩行できることが可能になります。この人工関節の分野でも最近の医療技術や医療材料の進歩は目覚しいものがあります。まず手術の傷跡がかなり小さくなってきて、早期リハビリ、早期社会復帰が可能となっています。また、人工関節の材質や形状の改良によって、長持ちする人工関節も使えるようになりました。そのため最近では比較的若い方も人工股関節を希望されるようになりました。

病気に気づいたらどうする

 整形外科を受診してください。この疾患の予後は主に壊死の大きさや位置などにより左右されます。つまり壊死が大腿骨頭の体重がかかる部分に占める範囲が大きいほど予後が悪い、つまり陥没しやすいということがわかっています。もし疼痛が出現すれば、それは圧潰の兆候ですので、手術の適応になりますが、陥没の度合いによって手術の選択肢が減ってきますので、早期に主治医へ受診されたほうがいいでしょう。

 

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